http://www.economist.com/blogs/johnson?source=hpevents
有名な言語学者で辞書編集者の Samuel Johnson の名前を冠したこのブログは、広い意味での言葉の使い方に関するさまざまな話題を取り上げています。
本年6月7日付けの最初の記事によれば、同名で同じ内容のコラムが1992年から1999年まで毎月掲載されていたとのことです。
http://www.economist.com/node/21007127/2010/06/language
ジャーナリズムの世界は言葉で勝負します。すべての専門家が自分の使う道具の良し悪しに関心を持つように、ジャーナリストは言葉に対して深い関心を持つものです。
程度の低い言葉の使い方に厳しい反面、常に変化している言語の現実をどの程度、表現の中に反映させるべきか悩むことも多いのでしょう。
このブログで取り上げる話題は英語のネイティブユーザー (しかも知的レベルがかなり高い) でないと完全なニュアンスをつかむことは難しいものが多いようです。
それでもこのブログは頑張って読む価値があると思います。言語の使用の最先端で何が起こっているかについて常に関心を持つことは、自分が言葉を使う場合でも大事になるからです。
最近の記事で私が面白いなと思ったのは次の二つです。
Showing his "ass"
http://www.economist.com/blogs/johnson/2010/06/swearing
アメリカの主流の出版界、例えばニューヨーク・タイムズでは、罵り言葉 (swear word) を避ける傾向が強い中で、オバマ大統領がBPの原油流出に対する怒りを示すのに "whose ass to kick" という表現を使ったことについて分析しています。
"Small people", big deal
http://www.economist.com/blogs/johnson/2010/06/corporate_gaffes
たまたまこれもBPに関する話題です。原油を流出させたBPの社長がオバマ大統領との会見のあとの記者会見で "We care about the small people" と言ったことが批判の的となった事件についてです。
この社長はスウェーデン人で英語のネイティブユーザーではありません。この表現が出てしまったのもそのためではないかとも言われています。
記者会見の様子はこの記事にあるビデオでも見られますが、確かに話し方はゆっくりで訛りもかなりあります。記事の中でも、"From his slow and heavily accented English, it's clear that the Swedish Mr Svanberg is not totally fluent in the language." と形容がされています。
私の印象では北欧諸国の人は英語をうまく使いこなす人が多いのですが、それは実際に英語を使うニーズが大きいのとそれに合わせた教育をしているのだからだと思います。スウェーデン語は系統的に英語と近接していますが、フィンランド語はまったく異なるものなので、母語の影響だけではないでしょう。
いずれにしても英語が使用言語である多国籍企業のトップをつとめられる人な訳ですが、それでもこのように微妙な表現の違いが大きな問題となる可能性までは予測できなかったのかもしれません。
同ブログでは同社長の言ったことに対してはいくぶん同情的ですが、一方でBPが「何をするか」(社長が何を言うかではなく)については厳しい見方をしています。
こうした細かい表現のことまで気を配らなければいけないのは大変ですが(その意味で、先日トヨタの社長が米議会の公聴会に出席したとき通訳を使ったのは賢明なことでした)、これも言葉の使用の現実です。もちろん、言っている内容がダメだったらどんなに発音が良くたって相手にしてもらえないのは当然です。