当時の上司で大変なスペイン語の達人(総理大臣や皇族といった人たちの通訳が完璧にできるレベル)がいました。人格的にも立派な方でしたが、スペイン語がこのレベルになっても(いや、このレベルだからと言うべきかもしれません)大変な努力を続けていることは敬服しました。ある時、この人の部屋に入っていくと、びっしり書き込みをしたノートに新しいスペイン語の言い回しを書き込んでいました。こうしたことが習慣化していないと外国語の運用能力を高めることはできないなと感じたものです。
生活レベルでのスペイン語は研修の成果もあってか、それほど苦労をしたという気はしません。大変だったのは妻の方で、まったくスペイン語の練習もできなかった(赴任の直前に結婚したため)ので、突然スペイン語の環境に放り込まれることになりました。ずいぶん心細かったのではないかと思います。妻は家庭教師を頼んでスペイン語の学習を始めましたが、いかんせん日本語での説明がない(日本語ができない家庭教師だった)ので最初は四苦八苦の感じでした。ただ、持っていった「基礎スペイン語会話」は説明が日本語であるし、練習量も多いので、自習には役立ったと思います。
私はスペイン語の練習は基本的には「基礎スペイン語会話」の復習が主でした。その他には、サンチャゴにある国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(英語略称ECLAC、西語略称CEPAL)で、国連職員、外交団向けのスペイン語のコースがあったので、週1回か2回、昼休みに行って練習しました。このコースもパタンプラクティスが主な手段でしたが、クラスでの会話なども楽しいものでした。いろいろな国からの生徒がいたので、どんな訛りになるかを聞くのも面白いと思いました。
(続く)